今回は、厚生労働省のデータや科学的な研究をもとに、ダイエットの仕組みを数字で検証してみたいと思います。
調べてみると、意外な事実がいくつも出てきました。
まずは、ダイエットの大原則から。
食べ過ぎれば太る!
消費カロリーより、摂取カロリーが多ければ太る。
摂取カロリーが消費カロリーを下回れば痩せる。
当たり前ですが、これが大前提であり結論です。
では、1日にどれぐらいのカロリーを消費するのか?
以下は、厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に掲載された推定エネルギー必要量です。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||
| 身体レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
| 18~29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
| 30~49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
| 50~64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
| 65~74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
| 75歳〜 | 1,800 | 2,100 | - | 1,400 | 1,650 | - |
単位はkcal/日
表内の身体活動レベルは以下のように通り。
・レベルⅠ:1日の大半を座って過ごし、活動量が少ない。
・レベルⅡ:デスクワーク中心だが、通勤や買い物、家事などでも身体を動かす。
・レベルⅢ:身体を使う仕事や活発な運動習慣がある。
これで、自分のおおよその適正摂取カロリーがわかります。
20代の女性で、活動レベルⅡなら、1日2,000kcal
これを継続的に上回れば太り、下回れば痩せるというわけです。(もちろん目安であり、個人差はあります)
つまり、適正摂取エネルギーは、消費エネルギーでもある ということです。
なお、消費エネルギーは以下の3つのエネルギーの合計になります。
消費エネルギー = ①基礎代謝 + ②活動消費 + ③食事誘発性熱産生
① 基礎代謝
何もしなくても、呼吸や心臓の動き、体温維持など、生命を維持するために使われるエネルギー。
具体的な数値は以下の通りです。
| 性別 | 男性 | 女性 |
| 18~29歳 | 1,530 | 1,110 |
| 30~49歳 | 1,530 | 1,150 |
| 50~64歳 | 1,480 | 1,110 |
| 65~74歳 | 1,400 | 1,080 |
| 75歳〜 | 1,280 | 1,010 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の参照体重に基づく推定値。単位はkcal/日。
② 活動消費
ウォーキングや筋トレなどの運動に加えて、仕事、家事、通勤、立ち上がるといった日常動作も含まれます。
なお、運動以外の日常動作によるエネルギー消費を NEATと呼びます。
エレベーターではなく階段を使う、立って作業する、掃除をする。
こうした日常の小さな動作も、積み重なれば無視できない消費エネルギーになります。
③ 食事誘発性熱産生(DIT)
実は「食べる」こと自体がエネルギーを消費するんです。
消化・吸収・代謝という作業にエネルギーが使われます。
一般的には、総消費エネルギーの約10%が目安とされています。
消費エネルギーが2,000kcalなら200kcalになるってことです。
……
ここで一度、私自身の計算をしてみたいと思います。
20代のころは、レベルⅡの生活スタイルだったので必要カロリーは2,000kcalになります。
自分で言うのもなんですが、スマートだったので摂取カロリーは1,900kcal程度と思われます。
それが現在は、40代で活動レベルⅠ。
必要カロリーは1,750kcalに減っています。
にもかかわらず、食事の量は減ってない💦
私を含め、中年太りの原因として考えるべきなのは、こうした生活習慣の変化にあります。
そう、世間でよく言う…
「歳を取ると代謝が落ちる」は言い訳なんです
先ほどの基礎代謝表を見てください。
18歳から64歳までって、ほとんど変化がないんです!
さらに、2021年に科学誌『Science』に掲載された研究結果でも
「体格などを考慮したエネルギー消費量は20~60歳までほぼ一定」
と報告されています。
つまり「歳を取ったから代謝が落ちて太る」というのは、必ずしも正しくありません。
むしろ言い訳とも言える。
中年太りの一番の原因は、運動量の低下なんです。
加齢 → 体力低下 → 活動量低下 → 筋力・心肺能力低下 → さらに活動量低下
といった悪循環によって、消費カロリーが減っているんです。
だからこそ、中年以降は、
「動ける身体を維持して、活動量を落とさない」
ことが重要なんです。
運動と言えば、最近は筋トレがブームのようですが…
「筋肉をつけると痩せやすくなる」は半分誤解
たしかに、筋肉が増えれば基礎代謝も増える傾向があります。
ただし、効果は一般にイメージされているほど大きくありません。
筋肉は脂肪の約3倍のエネルギー消費量があると言われています。
でも、そもそもの数値が低いんです。
以下は、体重65kgの成人男性モデルです。
| 臓器・組織 | 重量 | 1kgあたりの消費 | 1日の消費 |
| 脳 | 1.4 kg | 240 kcal/kg | 336 kcal |
| 肝臓 | 1.5 kg | 200 kcal/kg | 300 kcal |
| 心臓 | 0.3 kg | 440 kcal/kg | 132 kcal |
| 腎臓 | 0.3 kg | 440 kcal/kg | 132 kcal |
| 筋肉 | 25 kg | 13 kcal/kg | 325 kcal |
| 脂肪 | 12 kg | 4.5 kcal/kg | 54 kcal |
| その他 | 4.5 kg | 12 kcal/kg | 294 kcal |
| 合計 | 65 kg | - | 1,573 kcal |
※Elia(1992)などで用いられる組織別の安静時エネルギー消費率を基にした計算モデル。「その他」は単純化した概算値です。
厚生労働省の基礎代謝表では、18~29歳男性の基礎代謝は1,530kcal。
近い数値なのが確認できます。
では、筋肉の欄を見てください。
25kgもあるのに、1日の消費エネルギーは325kcal。
仮に 筋肉を3kg増やしても、たった39kcal増える程度 なんです。
※身体全体の基礎代謝が必ず39kcal増えるという意味ではありません
13kcal×3kg = 39kcal
だからといって、意味がないわけではありません。
むしろやるべき!
筋トレ自体の運動消費があるからです。
そして何より「動ける体づくり」です。
筋力が維持できれば、日常生活でも活動しやすくなります。
結果として、運動やNEATを維持することにもつながります。
……
ここで少し脱線しますが、先ほどの表からわかることがあります。
脂肪にも代謝はあるんです。
そう実は…
太ってるほど基礎代謝が高いことが多い
先ほどの表では、脂肪1kgあたり約4.5kcal。
つまり、脂肪が約8.7kg増えた場合、単純計算では、
4.5kcal × 8.7kg = 約39kcal
となります。
これは先ほどの筋肉3kg増加と同じ数値なんです。
また、体重が増えるほど運動エネルギーの消費量も増えます。
食事誘発性熱産生(食べることに使うエネルギー)にしても、食事量が増えれば消費エネルギーも増えます。
とはいえ、それ以上に摂取カロリーが増えれば、結局は太ってしまいます。
つまり、ここで私が言いたいのは「基礎代謝に期待するな!」ってこと
ダイエットしたいなら結局のところ
「摂取量を減らす」か「運動量を増やす」
もしくは両方。
ただし、例外もあります。
「私は食べても太らない」という例外
ときどき、そんな人がいます。
いわゆる「痩せの大食い」ですね。
まず、大前提として
「消費以上に摂取しているのに太らない」ということは、基本的にありません。
例えば、
20代で活動レベルⅡの女性の場合、消費エネルギーは2,000 kcalになります。
対して毎日3,000 kcalを摂取すれば、体重は増えていきます。
それでも太らないのは、想定以上にエネルギーを消費している「何か」があるのかもしれません。
もしくは、吸収を邪魔する「何か」があるんです。
体質による個人差もありますが、病気が隠れているケースもあります。
では、その何かとは…
過食によるNEATアップ
NEATというのは、運動以外の日常生活で消費するエネルギーです。
職場内での移動や家事だけでなく、立ったり座ったりや貧乏ゆすりなどの動作も含みます。
米国の研究者ジェームズ・レバイン(James A. Levine)による研究で、過剰摂取によるNEATの増加が確認されています。
食べ過ぎた際、人によっては無意識に体を動かす傾向があるようです。
ただし、誰にどの程度のNEAT増加が起こるのか、正確に予測できるわけではありません。
褐色脂肪が異常に活発な人
2つ目は、ギャル曽根さんで知られるようになった褐色脂肪組織。
脂肪には白色脂肪と褐色脂肪が代表的なものとしてあります。
一般的に「ぜい肉」と言われるのは白色脂肪。
エネルギーを蓄えるのが役割。
一方、褐色脂肪はエネルギーを熱に変えて消費する役割を持ちます。
脂肪と分類されますが、役割としては筋肉に近い。
主に首から鎖骨周辺と背骨近くに存在しています。
ギャル曽根さんについては、褐色脂肪の働きが活発だと紹介されたことがあります。
しかし「太らない理由」をそれだけで決めることはできません。
寒い環境では褐色脂肪が活性化することが知られていますが、それによって大幅に痩せられるという確立した方法はありません。
ダイエットのためなら、運動や食事の管理を優先する方が現実的でしょう。
ちなみに「消費が増える」という点で言えば、甲状腺機能亢進症という病気もあります。
甲状腺ホルモンが過剰になり、代謝が活発化することで体重が減る場合があります。
ただし、動悸や発汗、筋力低下などを伴うこともあり、健康的な痩せ方ではありません。
吸収不良症候群
NEAT、褐色脂肪など、ここまでは消費が増える仕組みでした。
ここで紹介するのは、栄養の消化・吸収が妨げられる病気です。
具体的には、以下のものがあります。
| 吸収不良症候群 | 小腸などで栄養を十分に吸収できない状態の総称 |
| 膵外分泌不全 | グルテンへの免疫反応で小腸の粘膜が傷つき、栄養吸収が低下 |
| 慢性膵炎 | 消化酵素が不足し、特に脂肪の消化・吸収が悪くなる |
| 膵外分泌不全 | 膵臓からの消化酵素が不足する |
| クローン病 | 腸の炎症などによって栄養吸収が低下することがある |
| 短腸症候群 | 小腸が短いため、十分に栄養を吸収できない |
なお、吸収不良の人に見られる症状として以下のものがあります。
・食べているのに体重が減る
・慢性的な下痢
・脂っぽく、浮きやすい便(脂肪便)
・お腹の張り
・貧血やビタミン不足
また、コントロール不良の糖尿病でも、食べているのに体重が減ることがあります。
こちらは腸での吸収不良とは異なり、尿中への糖の排出や体組織の分解などが関係します。
最近は「糖尿病の薬で痩せる」という話もよく耳にします。
実際に、食欲を抑えたり、糖の排出や脂肪の吸収に作用したりする薬があります。
ただし、副作用もあるため、安易な使用には注意が必要です。
時間制限食 VS 少量多食
最後に、ダイエットにおける食事の取り方について。
食事の時間や回数に対して、正反対ともいえる考え方があります。
見出しにある「時間制限食」と「少量多食」です。
まず1つ目、時間制限食とは、食事を取る時間帯を限定する方法。
有名なのが 16時間断食。
吉沢亮さん、MEGUMIさん、はじめしゃちょーが過去に実践したことを公言しています。
夕飯を20時までに終わらせ、次の日は正午まで食事をとらない、というのが一般的。
1日のなかで8時間以内に食事を済ませる方法です。
食事を取らない時間を長くすることで、消化器官を休ませるという説明を見かけることもあります。
確かに、食べていない間は食後の消化・吸収に伴う働きが減ります。
ただし、16時間食べなければ内臓が若返る、あるいは特別な脂肪燃焼効果が得られるとまでは断定できません。
続いて回数を増やす方法。
市川團十郎さんの「海老蔵ダイエット」が有名。
少量ずつ10回に分けて食べるというもの。
何度も食べることで強い空腹を感じにくくし、食べ過ぎを防ぐという考え方です。
この2つ、どちらが効果あるのか?
実は、食事回数と減量効果について調べた研究があります。
2023年に「食事回数が多い場合と少ない場合で、体重や代謝の健康指標に明確な優劣は認められません」と発表されています。
16時間断食によって間食が減り、1日の摂取カロリーが減れば痩せます。
少量多食によって1回の食べ過ぎが減り、1日の摂取カロリーが減れば、やはり痩せます。
重要なのは回数ではなく、総摂取カロリーの管理 です。
まとめ
結局は最初に書いた通り。
摂取カロリーが消費カロリーを下回れば痩せる。
ただし、痩せることと健康になることは別問題です。
食事を適切に管理し、動ける身体を維持する。
実にシンプルな話ですが、それが簡単にできれば誰も苦労しないんですけどね💦
■ 主な参考資料